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壮絶な本能
道ばたの石をひっくり返すと
小さな虫たちが、隠れ場所
を探し逃げまわります。
そのなかに、逃げずにその場で
シッポを振り上げ 勇敢にも
こちらを威嚇してくる
虫を見ることがあります。
その虫はハサミムシのメスで
体の下の卵を守っています。
昆虫のなかでも卵を守る種は
非常に少数派です。
卵が孵るまでの約40日間、
卵を産んだメスは
エサを口にすることもなく
卵から片時も離れず
飲まず食わずで卵を守ります。
卵にカビが生えないように
一つ一つ順番に
ていねいになめ、
空気に当てるため
卵の位置を動かしたりと
丹念に世話をします。
そして遂に孵化が始まりますが
母のハサミムシには
最後にすることがあります。
ハサミムシは肉食ですが、
孵化したばかりの子供には
獲物を獲ることができません。
子供は次々と
母ハサミムシに寄っていきます。
すると母ハサミムシは
生きているにもかかわらず
仰向けになり
おなかを上にします。
そして自分の身体のなかで唯一
柔らかい部分である おなかを
一番最初のエサとして
子供たちに差し出します。
母のハサミムシは
そこで食べられながら
死んでしまいますが
子供たちが生きていくための
最初の血となり肉となります。
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